
不動産の売買契約をする際に、必ずと言っていいほど登場するのが 「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」。
難しい言葉ですが、ざっくり言えば、
「買主が想定していた品質・状態と違っていた場合、売主が責任を負う仕組み」 のことです。
特に中古住宅や中古マンションでは、この契約不適合責任の内容によって安心感が大きく左右されるため、購入前にしっかり理解しておくことが重要です。
本記事では、一般の方向けに 契約不適合責任とは何か、どんなケースが対象になるのか、注意点はどこか をわかりやすく解説します。
1. 契約不適合責任とは?
契約不適合責任とは、
引渡しを受けた不動産が「契約で合意した内容どおりの品質・性能・状態ではなかった」場合に、売主が修補(修繕)や損害賠償などの責任を負う制度 のことです。
たとえば…
- 雨漏りがある
- 給排水管が破損しており生活に支障がある
- シロアリ被害がある
- 境界が契約内容と異なる
など、契約書で合意した状態と大きく食い違う場合が該当します。
ただし、すべての不具合が契約不適合になるわけではありません。
次の章でポイントを整理します。
2. 告知書で事前に知らされていた不具合は対象外
中古住宅の売買では、売主が「告知書(物件状況確認書)」に不具合を記載します。
重要なポイントは、
✔ 告知書で事前に知らされていた不具合は、契約不適合に該当しない
という点です。
たとえば、
- 「以前雨漏りがあり補修済み」
- 「給湯器の点火が不安定」
- 「シロアリ履歴あり」
などの情報が事前に提示され、買主がそれを理解したうえで購入した場合、後から「契約不適合だ!」と主張することはできません。
不動産購入時には告知書の内容を細かく確認することが極めて重要 です。
3. 中古住宅では「設備」は契約不適合責任の対象外が多い
中古の不動産売買では、
✔ エアコン、給湯器、キッチン設備、浴室乾燥機などの“設備”は契約不適合責任の対象外とされることが多い
これが実務上の大きな特徴です。
理由は、
中古住宅では設備の経年劣化が避けられず、引き渡し後にすぐに壊れることも十分あり得るので、売主の負担が大きくなってしまうのを避けるためです。
そのため契約書には、
- 設備については「現況有姿(げんきょうありのまま)」で引き渡す
- 引渡し後の不具合について売主は責任を負わない
といった文言が入るケースが多く、買主はその前提で購入する必要があります。
✔ 中古住宅では「設備が使える前提で購入する」という考え方は危険
購入後すぐに交換が必要なケースもあるため、
給湯器・エアコンなどは“交換費用”を見込んで検討するのが現実的 です。
4. 新築住宅は「10年間の契約不適合責任(品確法)」がある
新築住宅には、非常に強い買主保護制度があります。
🎯 品確法(住宅の品質確保促進法)によって、
構造耐力上主要な部分と、雨水の浸入を防止する部分については10年間の契約不適合責任が義務付けられている。
これは新築住宅の大きなメリットのひとつです。
具体的には…
- 基礎・柱・梁など構造上重要な部分
- 屋根、外壁、防水部分
などに欠陥があれば、 引渡しから10年間は売主(=建築会社)が無償で修補する義務があります。
✔ 10年間という長い保証期間は、新築の安心材料として非常に大きい
5. 不動産会社(宅建業者)が売主の場合の責任期間
一般の個人が売主の場合は、契約不適合責任の期間を3か月程度、または契約不適合責任免責と定めることが多く、買主側の保護は限定的です。
一方で、
✔ リノベーション物件などで不動産会社(宅建業者)が売主の場合は、契約不適合責任の期間は「引き渡しから2年以内」が一般的。
宅建業法により、業者売主は買主である一般消費者に対して最低2年間の契約不適合責任を負うよう定められているためです。
不動産会社が売主の場合、仮に契約不適合責任を免責する特約があっても無効です。
中古住宅であっても、
- 雨漏り
- 給排水の重大な故障
- シロアリ
- 構造上の欠陥
などについては、引渡し後2年以内であれば売主業者が責任を負うことになります。
6. 契約不適合責任で買主ができること(権利)
契約不適合が認められる場合、買主には次のような権利があります。
✔ 修補請求(修理してもらう)
✔ 損害賠償請求
✔ 代金減額請求
✔ 契約解除(重大な不適合の場合)
ただし、軽微な不具合では契約解除は認められません。
まずは売主への通知が重要で、期限内に申し出る必要があります。
7. 契約不適合責任でトラブルにならないためのポイント
不動産購入は大きな買い物です。
契約不適合に関するトラブルを防ぐためには、次の点が大切です。
✔ 告知書(物件状況確認書)をじっくり読む
事前に把握していた不具合は対象外になります。
✔ 設備は「現況渡し」が基本と理解する(特に中古)
給湯器やエアコンは寿命を迎えていることも多いです。
中古でもリノベーション物件(業者売主)の場合は設備保証があるケースも多いです。
✔ 新築は「構造+防水部分10年保証」がある
この保証が新築の安心材料。
✔ 業者売主の中古は2年保証が基本
個人売主とは大きく異なります。
8. まとめ
不動産売買契約における 契約不適合責任 は、難しく見えても実際には以下を押さえるのがポイントです。
- 告知書で知らされていた不具合は対象外
- 中古住宅は設備の不具合は責任を負わないことが多い
- 新築住宅は品確法で「構造・防水部分」について10年保証
- 不動産会社が売主の場合は2年間の責任期間
契約不適合責任の内容は物件の種類や売主によって大きく変わるため、
購入前に契約書・重要事項説明書・告知書をしっかり確認することが安心の第一歩です。
不動産購入で不安がある方は、専門家に事前相談することで後悔のない住まい選びにつながります。
