見落とすと危険?擁壁のある住宅購入で後悔しないための基礎知識

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マイホーム探しをしていると、「擁壁(ようへき)」という言葉を見かけることがあります。
特に坂の多い地域や高低差のある土地では、宅地を造成する際に地盤を支えるための擁壁が必要になることがあります。

一見、立派な石垣やコンクリートの壁があると「しっかりした土地」という印象を受けますが、実は擁壁の状態や種類によっては将来的に大きなリスクを抱えることもあります。

この記事では、擁壁付き住宅を購入する際に知っておくべきポイントと注意点を、わかりやすく解説します。


1. 擁壁とは?なぜ必要なのか

擁壁とは、高低差のある土地で土砂の崩れや滑りを防ぐための構造物です。
たとえば、山などの傾斜地や道路より高い位置にある土地に家を建てる場合、その土地の土を支えるために擁壁が必要になります。

主な役割

  • 土砂崩れを防ぐ
  • 雨水や地震による地盤の崩壊を防止
  • 隣地との高低差を安定させる

つまり、擁壁は「家を守る地盤の防波堤」のような存在です。
ただし、老朽化や施工不良があると地盤ごと崩れるリスクもあるため、構造や管理状態の確認がとても重要です。


2. 擁壁の主な種類と見分け方

擁壁にはいくつかの種類があります。それぞれ耐久性や法的扱いが異なります。

種類特徴注意点
コンクリート擁壁(RC造)鉄筋コンクリート製で耐久性が高い設計・施工時に「確認済証」があるか要確認
ブロック擁壁コンクリートブロックを積み上げたもの建築基準法上の擁壁ではない場合が多く、強度不足のリスクあり
石積み擁壁自然石やコンクリートブロックを積んだもの古い造成地で多く、排水や強度の点で注意が必要
もたれ式・L型擁壁コンクリートをL字型にして土を支える構造現行基準に適合していれば信頼性は高い

見た目が「きれいなブロック」でも、中に鉄筋や排水設備が入っていない場合は危険です。
特に昭和40〜50年代の造成地では、現行法に適合しない古い擁壁が多く見られます。


3. 古い擁壁に潜むリスク

(1) 老朽化による崩壊の危険

擁壁は長期間雨風にさらされるため、ひび割れや傾きが発生することがあります。
一見わずかな亀裂でも、内部の鉄筋が錆びていると強度が大きく低下していることも。

地震や豪雨で一気に崩壊する例もあり、実際に宅地の一部が崩れた事故は全国で発生しています。

(2) 法令上の問題(再建築不可の可能性)

古い擁壁の中には、建築基準法の「宅地造成等規制法」に適合していないものもあります。
例えば、擁壁の高さが2mを超える場合、原則として確認申請が必要です。

これが確認されていないと、次のような問題が起こることがあります:

  • 再建築の際に擁壁のやり直しを求められる
  • 融資(住宅ローン)が通らない
  • 売却時に買主がつかない

擁壁付き住宅は、不動産会社や銀行も慎重に扱うケースが多いのです。


4. 擁壁をチェックする際のポイント

✅ 現地での確認ポイント

  1. ひび割れや傾きがないか
     → 横方向や縦方向のクラック(亀裂)は構造劣化のサイン。
  2. 排水穴(ウィープホール)があるか
     → 雨水を逃がす穴がないと、内部に水圧が溜まり崩壊リスクが高まります。
  3. 上部のフェンスや塀が重くないか
     → 擁壁上にブロック塀などを設置していると、荷重が増え危険。

✅ 書類での確認ポイント

  • 造成時の「確認済証」や「検査済証」があるか
  • 建築確認図面・構造計算書の有無
  • 行政への「宅地造成許可申請」の記録

特に高低差2mを超える擁壁は、必ず「確認済証」の確認が必要です。
書類が見つからない場合は、行政や専門家(建築士・地盤調査会社)に相談しましょう。


5. 擁壁付き住宅を購入する際の対策

(1) 専門家による現地調査

外見だけでは安全性を判断できません。
購入前に建築士や地盤の専門家に「擁壁調査」を依頼することをおすすめします。
費用は5〜10万円程度ですが、将来の修繕費やリスクを考えれば十分に価値があります。

(2) 費用面の想定

もし擁壁の補修ややり直しが必要になった場合、100万円〜数百万円単位の費用が発生することも。
特に「擁壁のやり直し+造成工事」は、数千万円になることもあるため、購入前にしっかり試算しておきましょう。

(3) 保険や補助金の活用

自治体によっては、老朽擁壁の撤去・改修補助金が出る場合もあります。
また、地震保険や地盤保証の対象に含まれるケースもあるため、加入条件を確認しておくと安心です。


6. 擁壁付き住宅のメリットもある

リスクばかりが注目されがちですが、擁壁付きの高台住宅には景観や通風、日当たりの良さといったメリットもあります。
また、同じエリアでも平地より価格が抑えられることも多く、条件次第では魅力的な選択肢です。

重要なのは、「安全性を確認したうえで購入すること」。
不安がある場合は、FP(ファイナンシャルプランナー)や不動産の専門家に相談し、リスクとコストを整理して判断するのがおすすめです。


まとめ|擁壁付き住宅は「慎重に確認すれば」安心して住める

擁壁は、家を支える大切な構造物です。
しかし、古い擁壁や不明確な造成履歴のある土地では、崩壊リスクや法的制約が生じることもあります。

購入前に以下をチェックしておきましょう。

  • 現地でひび割れ・傾き・排水穴を確認
  • 行政に造成許可や確認済証の有無を確認
  • 必要に応じて専門家による診断を依頼

安全性をきちんと確認できれば、坂のあるエリアでも安心して暮らせます。
擁壁の知識を持つことで、「見た目」ではなく「構造」で選ぶ家探しができるようになります。