
マイホーム購入の際、ほとんどの方が「住宅ローン」を利用します。
しかし、もし住宅ローンの審査が通らなかった場合、売買契約を結んだあとでも「違約金なしで契約を解除できる」仕組みがあることをご存じでしょうか?
それが「ローン特約(融資利用の特約)」です。
本記事では、不動産売買におけるローン特約の基本から注意点までをわかりやすく解説します。
1. ローン特約とは?
ローン特約(融資利用の特約)とは、住宅ローンの審査が不承認となった場合に、買主が違約金を支払うことなく契約を解除できるという特約です。
つまり、
「ローンが通らなければ契約をなかったことにできます」という買主を守るための安全装置です。
2. ローン特約がないとどうなる?
もしローン特約がない状態で契約した場合、ローンが通らずに購入資金を用意できなかったとしても、「買主の都合による契約解除」となり、手付金の没収や違約金の発生といったリスクが発生します。
特に、数百万円単位の手付金を失う可能性もあるため、住宅ローンを利用する場合は必ずローン特約を付けることが一般的です。
3. ローン特約の基本的な流れ
- 売買契約を締結(この時点ではローンの事前審査結果のみの場合が多い)
- 住宅ローンの本申込みを行う
- 審査結果の通知を受ける
- 不承認の場合は売主に契約解除の通知
- 手付金は全額返還される
4. ローン特約の「期限」に注意!
ローン特約には必ず「期限(融資承認期日)」が定められています。
この期限までに審査結果が出ない場合、または期限を過ぎても売主に通知をしなかった場合は、「ローン特約が無効」となってしまうことがあります。
例:契約書における記載例
融資利用の特約
- 買主は、売買代金に関して、表記融資金を利用するとき、本契約締結後すみやかにその融資の申込み手続をします。
- 表記融資承認取得期日までに、前項の融資の全部または一部の金額につき承認が得られないとき、または否認されたとき、買主は、売主に対し、表記契約解除期日までであれば、本契約を解除することができます。
- 前項により本契約が解除されたとき、売主は、買主に対し、受領済みの金員を無利息にてすみやかに返還します。
- 買主が第1項の規定による融資の申込み手続を行わず、または故意に融資の承認を妨げた場合は、第2項の規定による解除はできません。
つまり、「いつまでに承認を受けるか」が非常に重要です。この期日は契約書でしっかり確認しましょう。
5. ローン特約が適用されないケースもある
ローン特約は買主を守る仕組みですが、万能ではありません。
以下のような場合は、特約の適用外となることもあります。
主な適用外ケース
- 買主が自らの判断でローン申込みをしなかった場合
- 書類不備や虚偽申告など、買主側の過失で審査に落ちた場合
- 契約書で指定された金融機関以外に申し込んだ場合
- 期限内に不承認である旨通知しなかった場合
このようなケースでは、
「買主の責任」とみなされて手付金没収や違約金発生となるリスクも。
6. ローン特約の「解除条件」を確認するポイント
契約前に、以下の点を不動産会社の担当者に確認しておくと安心です。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 特約の有無 | 契約書にローン特約が記載されているか |
| 承認期日 | いつまでに審査結果を出す必要があるか |
| 金融機関 | どの金融機関の審査結果をもって判断するか |
| 対象金額 | ローン希望額がいくらか |
7. 「減額承認」の場合はどうなる?
審査が「不承認」ではなく、「希望額より少ない承認(減額承認)」の場合、特約でどう扱うかは契約内容次第です。
多くの場合、
「希望金額の融資が受けられなければ解除できる」
という文言があれば、減額承認でも解除可能です。
ただし、その明記がなければ、
「承認は下りた」とみなされ、契約を解除できないこともあります。
したがって、契約前に「希望額」を明記しておくことが大切です。
8. フラット35利用時の注意点
フラット35などの長期固定金利ローンは、審査や手続きに時間がかかる傾向があります。
そのため、ローン特約の「承認期限」を余裕をもって設定することが重要です。
また、団信(団体信用生命保険)の審査結果も必要になるため、健康状態によっては時間がかかる場合があります。
金融機関に早めに相談し、スケジュールを調整しましょう。
9. ローン特約は「安心して契約に進むための保険」
ローン特約は「住宅購入を安心して進めるための保険」のようなものです。
特に初めての住宅購入では、「仮審査が通ったから大丈夫」と安心しがちですが、本審査での否決は決して珍しくありません。
本審査で否決される主な理由
- 勤続年数が短い
- クレジットカードや自動車ローンなどの借入状況
- 申込内容と収入・支出のバランス
- 団信審査(健康状態)での不承認
こうした不確実性に備えるためにも、ローン特約付き契約で安全に進めることが基本です。
10. まとめ|ローン特約を正しく理解して安心の不動産取引を
住宅購入は人生の中でも大きな買い物。
その中で「ローン特約」は、万一のリスクから買主を守る大切な仕組みです。
✅ この記事のまとめ
- ローン特約は「ローンが通らなかった場合に違約金なしで契約解除できる制度」
- 期限や提出書類を守らないと特約が無効になる場合も
- 減額承認の扱いは契約内容を要確認
- フラット35などは審査期間に余裕をもって設定
- 契約前に不動産会社へ細かく確認を!
