マイホームを購入する際、多くの人が利用するのが「住宅ローン」です。
しかし、住宅ローンは誰でも簡単に借りられるものではなく、金融機関は申込者の「返済能力」や「信用力」をさまざまな角度から審査します。
今回は、一般的な住宅ローンの審査基準について、ファイナンシャルプランナーの視点からわかりやすく解説します。
1. 住宅ローン審査の流れ
住宅ローンには「事前審査(仮審査)」と「本審査」の2段階があります。
- 事前審査(仮審査)
借入希望者の年収や勤続年数、他の借入状況などをもとに、融資の可否やおおよその借入可能額を確認します。
不動産購入前の段階で行うことが多く、審査期間は通常2~3営業日ほどです。 - 本審査
売買契約締結後、正式に融資を申し込む段階です。
ここでは、源泉徴収票や住民票、登記簿謄本などの正式書類をもとに、より詳細な審査が行われます。
審査期間は1~2週間程度が一般的です。
2. 審査で重視される5つのポイント
住宅ローンの審査では、主に以下の5つの観点から「返済能力」がチェックされます。
(1) 年収と返済負担率(返済比率)
もっとも重要視されるのが「返済負担率(返済比率)」です。
これは、年収に対して年間のローン返済額がどの程度の割合を占めるかを示す指標です。
一般的な目安は以下の通りです。
年収 | 目安となる返済負担率 |
---|---|
400万円未満 | 25〜30%以内 |
400〜600万円 | 30〜35%以内 |
600万円以上 | 35〜40%以内 |
たとえば、年収500万円の場合、年間返済額の上限は150万円程度(月々12.5万円ほど)が目安です。
金融機関によっては「35%以下」を上限としているところもありますが、実際には生活費や教育費などを考慮して、25〜30%以内に抑えるのが安心です。
(2) 勤続年数と職業
安定した収入を得ているかどうかも審査で重視されます。
そのため、「勤続年数」が1つの判断基準になります。
多くの銀行では「勤続3年以上」が目安ですが、最近では転職が一般化しているため、1~2年でも認められるケースも増えています。
ただし、同業種への転職で収入が安定している場合と、職種が変わって収入が不安定な場合では評価が異なります。
また、公務員や大企業の正社員は評価が高く、個人事業主やフリーランスは慎重に審査される傾向があります。
個人事業主の場合は、直近3年分の確定申告書や納税証明書が求められます。
(3) 他の借入・クレジット利用状況
住宅ローン以外の借入状況も重要なチェック項目です。
たとえば、以下のような借入がある場合は、返済負担率に影響します。
- 自動車ローン
- 教育ローン
- カードローンやキャッシング
- リボ払いの残高
これらの借入が多いと「返済能力が低い」と判断され、借入可能額が減ることがあります。
また、クレジットカードやスマホ分割払いの支払い遅延があると、信用情報に記録され、審査に不利になります。
(4) 年齢と完済時年齢
住宅ローンは最長で35年の長期契約が一般的ですが、銀行は「完済時の年齢」にも注目します。
多くの金融機関では「完済時80歳未満」を条件としており、たとえば45歳で借りる場合は、最長でも35年ローンは難しく、30年以内になるケースが多いです。
そのため、「定年後も返済が続く」場合の資金計画も非常に重要になります。
(5) 担保評価(物件の価値)
住宅ローンは「住宅(不動産)」を担保に融資されます。
そのため、金融機関は物件自体の価値(担保評価)を確認し、融資額を決定します。
特に中古住宅や土地の場合、立地条件・築年数・構造などによって評価が変わります。
担保評価が低いと、希望額の全額を借りられないケースもあります。
そのため、「物件価格=融資可能額」ではない点に注意が必要です。
3. 信用情報のチェックも欠かせない
すべての金融機関は、申込者の**信用情報機関(CICやJICCなど)**のデータを確認します。
そこには、過去のローン・クレジットカード・携帯電話分割払いなどの利用履歴や返済状況が記録されています。
- 返済遅延や延滞がある
- 債務整理や自己破産の履歴がある
- 直近で多くのローン申込をしている
こうした履歴があると審査に落ちる可能性が高くなります。
日頃からカード支払いや公共料金の引き落としを遅れずに行うことが、住宅ローン審査への第一歩です。
4. 夫婦・親子での収入合算も可能
近年では、夫婦共働きや親子ペアローンなど、複数人の収入を合算して借りる方法も増えています。
- 夫婦共働きで「収入合算」するケース
- 親と子で「親子リレー返済」を利用するケース
これにより、単独では難しい借入額でも審査が通りやすくなることがあります。
ただし、どちらかが退職・休職した場合のリスクも考慮し、余裕を持った返済計画を立てることが大切です。
5. 審査に通りやすくするためのポイント
住宅ローン審査をスムーズに通すためには、以下のような点に注意しましょう。
- 借入希望額を現実的に設定する
年収の7倍以内が1つの目安です。 - クレジットカードやローンの残高を減らす
特にリボ払いやカードローンは早めに完済を。 - 延滞・未払いをなくす
支払い遅延は数年残るため、日常の支払い管理を徹底。 - 収入や勤務状況の安定を示す
転職直後や収入が不安定な時期は避けて申込む。 - 自己資金をしっかり準備する
頭金を多く入れることで審査評価が上がることもあります。
6. まとめ:審査は「信頼」と「返済計画」を見る
住宅ローンの審査は、単に「年収の高さ」だけでなく、これまでの信用履歴・生活の安定性・物件の価値など、総合的に判断されます。
つまり、銀行が見ているのは「この人に安心して貸せるかどうか」という“信頼”です。
審査基準を正しく理解し、事前に準備を整えることで、より有利な条件でローンを組むことができます。
ウィズFPでは、住宅ローン選びから資金計画まで、ライフプランに合わせたサポートを行っています。
「自分はいくらまで借りられる?」「どの銀行が通りやすい?」など、気軽にご相談ください。