マイホーム購入後にかかる「保有時の費用」とは? ~賃貸にはないコストと金利リスクを理解する~

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マイホーム購入を検討する際、多くの方が「物件価格」と「住宅ローンの返済額」ばかりに目を向けがちです。

しかし、実際に購入後は賃貸では発生しない特有の費用がかかります。

さらに、住宅ローンそのものにも金利上昇リスクが潜んでいます。

この記事では、マイホーム購入後の「保有時の費用」に絞ってわかりやすく整理し、注意すべきポイントを解説します。


1. 住宅ローン返済

住宅ローンは最大の保有コスト

マイホーム購入者の多くが利用する住宅ローンは、返済が長期にわたります。
借入額が大きいため、毎月の支出の中心となるのが住宅ローン返済です。

変動金利のリスク

現在、変動金利は 年0.5%台~ と非常に低水準ですが、これは「将来も続く」とは限りません。

  • 金利上昇で返済額が増える可能性
  • 当初の返済額は抑えられても、金利が1%上昇すると毎月の返済は数万円単位で増えることも

中長期では金利上昇トレンド

日本でも物価上昇や金融政策の正常化に伴い、今後は中長期的に金利が上昇する局面に入ると見込まれています。
「変動金利だから当面は安心」と考えるのは危険であり、金利上昇リスクを織り込んだ資金計画が必要です。


2. 固定資産税・都市計画税

固定資産税

不動産を所有している人に毎年課される税金です。

評価額に応じて算出され、戸建て・マンションを問わずかかります。

  • 固定資産税率:1.4%
  • 都市計画税率:上限0.3%(市街化区域のみ)

計算例

固定資産評価額3,000万円の場合(購入価格と固定資産評価額は異なります)

  • 固定資産税:3,000万円 × 1.4% = 42万円/年
  • 都市計画税:3,000万円 × 0.3% = 9万円/年
    → 合計 約51万円/年(約4.3万円/月)

新築住宅の軽減措置

新築住宅には、一定期間(3年or5年)固定資産税が1/2になる特例があります。ただし、期限を過ぎると税額は上がるため注意が必要です。


3. 火災保険・地震保険

賃貸では建物の火災保険は大家さんが負担していますが、持ち家の場合は自己負担です(ただし賃借人も借家人賠償付の火災保険は加入必須が多い)。

住宅ローンを借りる際は加入が必須条件となることが多いです。

  • 火災保険:年間 1~3万円程度
  • 地震保険:年間 1~2万円程度

地震リスクが高い日本では、火災保険だけでは十分でなく、地震保険の加入も検討すべきでしょう。


4. マンション特有の費用(管理費・修繕積立金)

マンションを購入した場合は、共用部分の維持にかかる費用を所有者全員で負担します。

  • 管理費:月 1~2万円
  • 修繕積立金:月 1~2万円

築年数が経過すると、修繕積立金が引き上げられるケースが多く、将来的な負担増も想定しておく必要があります。


5. 戸建て特有の修繕費

戸建て住宅では、管理費や修繕積立金はありませんが、その分を自分で積み立てておく必要があります。

  • 外壁塗装・屋根修繕:10~15年ごとに100~200万円
  • 水回りリフォーム:20~30年ごとに100~300万円

→ 月々 2~3万円程度 を修繕費として積み立てておくと安心です。


6. 設備更新費(給湯器・エアコンなど)

マイホームには、生活に欠かせない各種設備が備わっています。

これらも消耗品であり、一定年数ごとに交換が必要です。

賃貸では大家さんが修繕する場合がほとんどですが、マイホームでは自分で修繕しなければなりません。

主な設備と交換目安

  • 給湯器:10~15年ごとに交換、費用 20~40万円
  • エアコン:1台あたり10~15年ごと、費用 10~20万円/台
  • IHクッキングヒーター/ガスコンロ:10~15年ごとに 10~20万円
  • トイレ・洗面台の機器交換:20年前後で 20~40万円

戸建てでもマンションでも必要となる費用であり、修繕積立金とは別枠で考えておくと安心です。
年間1~2万円程度を「設備更新費」として積み立てるのが現実的です。


7. 金利上昇シミュレーション

最後に、最も大きなリスクとなる「金利上昇」を具体的にシミュレーションしてみましょう。

前提条件

  • 借入額:5,000万円
  • 返済期間:35年
  • 元利均等返済
  • 当初金利:0.5%(変動金利)

金利別の毎月返済額

金利毎月返済額当初との差額
0.5%約131,000円基準
1.0%約141,000円+1万円
2.0%約165,000円+3.4万円
3.0%約190,000円+5.9万円

→ 金利が 2%上昇すると、毎月の返済額は約3.4万円増加。年間では40万円以上の負担増となります。
→ 3%まで上昇すれば、当初より毎月6万円近い増加。家計に与えるインパクトは極めて大きいといえます。


8. 保有コストの全体像

ここまでの費用を「月額換算」で見てみましょう。

費用項目戸建てマンション
住宅ローン返済(例:5,000万円借入、金利0.5%→月13万円程度)13万円13万円
固定資産税・都市計画税約4万円約4万円
火災・地震保険約3,000円約3,000円
修繕費積立(自己管理or修繕積立金)約2~3万円約2~4万円
設備更新費(給湯器・エアコン等)約1万円約1万円
合計約20~21万円/月約20~22万円/月

※ここに加えて、将来的な金利上昇リスクを考慮する必要があります。


9. まとめ:賃貸との最大の違いは「リスク」と「維持費」

マイホームを持つということは、単に「家賃がローンに変わる」だけではありません。

  • 固定資産税や保険など所有者特有の費用
  • 設備更新や修繕など生活インフラ維持のコスト
  • 住宅ローン返済に潜む金利上昇リスク

特に変動金利を選ぶ場合は、将来的な金利上昇による返済負担増を見込んだシミュレーションが欠かせません。

特に変動金利を選ぶ場合は、「今の返済額なら大丈夫」ではなく、「2~3%上がっても家計が耐えられるか」という視点を持つことが、安心してマイホームを維持するカギとなります。